小中学生にさせる握手の形式への違和感

日本の小・中学生年代のサッカー練習後によくある、選手がずらっと並んでコーチに両手を差し出して握手していくのを見ると、私は少し居心地悪く感じます。どこか不自然で本来のあり方とは違うように思うんです。

私にとって最初にその光景を見たのは5−6年前の日本での講習会参加の時でした。会場はあるサッカーチームのトレーニンググランドでもあったため、私たち受講生は毎日放課後に練習に来る選手たちと顔を合わせていました。

 

 

私は大学4年が終わるタイミングで休学し、それからイギリスやタイなど海外で生活しています(大学はその後無事卒業できました)。ですので、大人になってから日本の小・中学生のサッカーチームを見るのはその時がほぼ初めてでした。

そして正直、その光景を見た当初は、「日本すごいな、やっぱりサッカーを通じて人間教育に取り組んでいるんだな」って思って感心していました。

 

 

でもその講習会期間中、こういった握手と挨拶を見ていてだんだん違和感を感じ始めたのです。

 

 

「なぜか多くの選手が急いでいる気がする」

「なんか変に特別な感じがする」

そんな違和感です。

 

さて、私は握手自体とても好きですし、上手に気持ちのこもった握手をする人を尊敬しています。

私の経験でとても印象的だったのはあるスウェーデンの女子プロサッカー選手です。8年ほど前に私はそのチームに1ヶ月技術コーチとして招かれていました。その初日にクラブハウスに入り待機していた時、この選手がドアを開けて入ってきて笑顔で歩み寄ってきました。彼女は握手しながら「よくうちのクラブにきてくれたね、ようこそ、私は〇〇」と自己紹介してくれました。

その時の自然で力強い印象は、これぞプロの態度だなっと今でもとてもよく覚えています。

 

 

スウェーデンだけでなく、サッカーをプレーしにいったイギリスでも握手や挨拶にはとても感心させられていました。サッカーの試合後はどんな結果になってもお互いが率先して歩み寄って握手しあっていましたし、練習前にはチームメイト同士で気軽に握手して冗談を言い合っていました。

 

そういえば、イギリスではスーパーのレジの人や散歩しているおじいさんにも挨拶され、最初はそれに驚くばかりでしたが、だんだんこちらからもできるようになりました。

 

 

それではなぜ日本での握手を見て違和感を覚えたのでしょうか。

この文章を書くにあたって考えてみると、それはきっと、行列になっているからだろうと思い当たりました。

私はその講習会の会場で出会うまで「大人数が並んで順番待ちして握手する」ということをサッカーチームで見たことがなく、流れ作業のように見えてしまったのです。

 

この作業は、形式上

「握手をしている選手は次の人のために急いでいる」

「たくさんの人が列をなしている光景はまるでコーチがより大事な人である」

といった印象を私に与えていたのでした。

 

 

もし、この形式で握手をすることが、潜在的に上記のような気持ちを選手に芽生えさせるとすると、毎日のトレーニング前後での繰り返しによってどんな影響がでるのでしょうか。

もしかしたら、「形式を気にして、一方通行で、周りの目を気にしすぎる」ような選手たちを育んでしまうかもしれません。

 

「ここの子たちは挨拶が自然だね」

これは、私がバンコクでスクールコーチをしていた時に、特別クリニックのコーチとして東京のあるクラブから来てもらったコーチにかけられた言葉です。

この特別クリニックは、バンコクに住む日本人小中学生対象で開催し、普段スクールに来ている子たちが主な参加者でした。

 

 

実は、そのころ子供達に常日頃こうやって挨拶をしましょう、としっかりと教えていませんでした。なので、特に小学生の参加者はクリニック後に、照れ臭そうにゲストコーチへ「ありがとう」って言いにいったり、中にはいかないでバイバイっと笑顔で手を振ったり、そんな状態だったのです。

 

 

もちろん正直言って、挨拶できない子たちも中にはいて、その時の状況がすごくよかったとは私はいいません。ただ、形式に隠されない素直な感情がそこにあったというのは確かで、ゲストコーチの方にとってきっと新鮮な感覚だったのでしょう。

 

 

 

さて、今の私の意見としては、小中学生にも挨拶や握手は積極的にさせるべきだとは思います。ただ、列は作るべきではないと思っています。

 

 

まるでアイドルの握手会のようになってしまうと、コーチと選手のコミュニケーションや感謝の関係が一方通行になってなってしまうと思うからです。

なので、なぜ挨拶や握手が必要でどんな効果があるか、また逆に、もし挨拶しないとどんな印象を与えるかを教えた上で、タイミングは選手に選ばせればいいのかなって思います。

 

 

自然な挨拶や握手ができる関係性では、双方向のコミュニケーションが生まれます。例えばスウェーデンではU-15の選手たちに「Hey, How are you?」と聞かれることもありました。こういう関係になれれば、練習中に質問しても面白い答えが返ってきそうですよね。

 

 

練習後も列がなければ、待っている後ろの人のプレッシャーもないので、一人一人の反応を見る時間も長くしようと思えばできます。もちろんその間、他の子は、今ちょっとコーチが忙しそう、と思って適当に自分の荷物をとりにいったり、ストレッチしたり適当に順応できます。

 

 

ところで、現在私は完全にタイ文化の子達のチームで活動しています。

タイの挨拶文化は、握手ではなく「ワイ」と呼ばれる、拝むように両手を合わせるものです。

私はワイも尊重しますし普段の生活はそちらでいいと思っています。でもチームでは握手をすることを教えています。

というのもワイは遠距離でもできてしまい、そのためコミュニケーションのきっかけにならなかったり、相手の雰囲気がわかりにくい時も多いのです。

ちなみに握手をしましょうと言っても、ハイタッチを好む子もいれば、中には練習後にハグしてくる選手もいます。なのでうちの練習前後の挨拶はちょっとカオスな風景になっています。

 

 

皆さんも練習前後の挨拶の仕方を考えてみるのはいかがですか。もしかしたらより積極的で自主性のある選手たちの育成につながるかもしれませんよ。(了)

 

Written and edited by Takuro Hosaka

soccercoaching.jp編集者

AFC A級

JFA A級U-12

 

2017年~ タイプレミアリーグクラブ True Bangkok United アカデミー U13監督

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Tags: コーチの心構え  
By: Admin
Posted: 2019年10月23日 16:36

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