サッカーに真の天才はいるのか?

もし、みなさまに「才能のある選手に出会ったことがありますか?」と尋ねれば、おおよそ全員が「はい。もちろん!」と答えるだろう。もしかしたら、選手名を挙げて、「昔、●●選手と対戦したがすごかった!」と実名を挙げて説明できる人も少なくないと思う。では、今回はその考えに少しばかりの疑問を投げかけてみたい。

著者:マルコム・グラッドウェルの「Outlier the story of success」(邦題:天才!成功する人々の法則)を参考にすると、全員が一流になれるわけではなく、一流になることができるのは生まれながらの才能に恵まれたものであることは否定していない。しかし、心理学者が才能のある者の経歴を調べるほどに、トレーニングの要素がそれよりも重要ということがわかってきている。

 

サッカー選手、作曲家、バスケットボール選手、小説家、アイススケート選手、ピアニスト、犯罪者まで数多くの経歴を見ていくと、突出したレベルになる人物は共通して「圧倒的な訓練の量」をこなしていることである。そして、その圧倒的な訓練量の数字は、「1万時間」ということである。

例えば、プロを目指すバイオリニストが音楽学校に入学する頃には、10000時間の練習量を超えているのに対して、音楽教師を目指すグループでは、4000時間程度であった。興味深いのは、4000時間の練習量でプロのバイオリニストになれる「生まれながらの才能」は見つけられなかったことである。一方で、誰よりも練習をするが、トップレベルに入ることができない「無駄な努力家」も見つけられなった。そして本の中では、本当の才能の差がみられるのは10000時間以後であり、トレーニングはその優れたレベルに達するために最低限必要なものであると加えられている。

 

マルコム・グラッドウェル氏は、もう1つ興味深い事例を挙げている。ビートルズは英国リバプール出身のロックバンドであるが、彼らは下積み時代に、ドイツ・ハンブルクのストリップ劇場で演奏を行っていた。そこでは、一日8時間×週7日で演奏を行い、1年半で270日もステージで演奏することがあった。曲がヒットする頃には、1200回ものライブを行っていたそうである。ちなみに多くのバンドは生涯を通じても1200回もライブを行うことはない。つまり、彼らはハンブルグでの下積みが圧倒的な訓練の場になったということである。

 

Real Madrid Training Session : ニュース写真

 

 サッカーコーチとして考えたいのは、「10000時間」の意味である。仮に、18歳をプロ契約ができる一つの到達点と置いたときに、18歳までに10000時間を達成しようとすると、小学校1年生から365日欠かさず、毎日2時間半×12年間行って達成される時間である。小学校4年生からであれば、欠かさず毎日3時間が必要である。つまり、途方もない膨大な量であるということである。代表や選抜チームなど、早期に何らかのプロジェクトに参加して、プレー時間が増える機会に恵まれた選手は、結果的にその世代において、まずますトレーニング機会にも恵まれることになる。

 

もちろん、子供が夢中でサッカーをやってくれることが大事となるが、これをクリアするには、コーチの支えだけでなく、両親の支えや理解も不可欠である。家計的な理由でアルバイトが必要な子供や塾や他の習い事も大事にしている子供なども結果的には十分な練習時間が取れないことを意味する。(もちろん時間の使い方に工夫の余地はあるが) 不可避なリスクとしてはケガや病気などでサッカーが続けられない可能性も頭にいれなければならないし、思春期の子供がTVやゲーム、音楽などに興味が移る可能性もある。

 コーチであるあなたに、子供やそのご両親が、「プロサッカー選手にはどうしたらなれるのか?」と尋ねてくることもあるだろう。その時は、この10000時間の到達イメージや、10000時間の先には天才たちが才能を凌ぎ合う世界があることも、あなたの考えをお伝えする時に一つの参考に思い出していただければ幸いである。(了)

 

参考文献:Malcom Gladwell著「OUTLIERS The Story of Success」 (邦題:天才!成功する人々の法則 勝間和代=訳) 

 

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Tags: コーチングアドバイス  
By: Admin
Posted: 2016年09月22日 23:12

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