FCバルセロナ:解体される戦争サッカー用語

This article was originally published on www.playerdevelopmentproject.com.     FCバルセロナでは目指すサッカーを実現するためにサッカー自体を考える際の言葉にもメスを入れている。Player Development Projectの記事からぜひその活動の一端を紹介したい。

PDP*のリサーチチームリーダー、ジェームズ・ヴォーンは先日ニュージーランドのクライストチャーチで行われたFCバルセロナ・メソッド部門責任者ジョアン・ビラ・ボスチ氏のセミナーに出席した。
ジョアン氏はその中でどのようにしてFCバルセロナがコーチングの言葉としてもサッカーを囲む戦争用語を取り払ったのかを語っていた。

*Player Development Project、この記事の翻訳元、サッカーコーチングウェブサイト。指導部門、リサーチ部門など各分野の専門家がプロサッカーから育成年代まで毎回興味深く、読者のレベルアップにつながる記事を提供している。

 

ジョアン氏と彼のセクションは「戦争サッカー言語」と呼ばれるような言葉ではなく、理論的な科学的原理からFCバルセロナのサッカーを、そして特にクラブ内で使われる言語を定義しようとしている。

ジョアンの説明によると・・・

「人はその使っている言葉によって定義されてしまう。」

サッカーにおいて使われる言葉は、考え、心情、そして価値観を伝え合う。そしてこういった考え、心情、価値観といったものはピッチ内外での選手の行動を決定する。(特にこちらで紹介されているような伝わりやすい説得力のあう文化的習慣やトレンド。訳注:このリンク先は翻訳元の会員のみに公開されています。)ジョアン氏はさらに動的機能性や複雑性、自己オーガナイズ、さらには生態心理学、といったマーク・アプトン氏とのこちらのウェビナー(訳注:オンラインセミナー、翻訳元会員用)で扱ったポイントを支持する内容を語った。

そういった私の中で学術的に心に響く内容もあった中で、今回彼が語ってくれた話の中でもっとも私にとって意義深かったものは(そしてどんなコーチやクラブにもそれは言えるだろう)FCバルセロナで使われているボキャブラリー、つまり言語に関してであった。コーチングで学識のある、キャシディ教授とキッドマン教授も、アカデミーやクラブといったスポーツ団体では固有の言語や行動の中に、WHAT(なにをするか)とHOW(どのようにするか)という意味や理由が埋め込まれているのである、と述べている。(訳注:キャシディ、キッドマンはそれぞれニュージーランドの大学教授であり、コーチングに関して2010年に共著した本の中に上記の内容を述べている。)ただ学識者とは違い、サッカークラブではこのようなことは気にされていないことが多い。

 

しかし、FCバルセロナはクラブモットーが示すとおり「More than a club (訳注:クラブ以上の存在)」と考えており、クラブ内のメソッド部門(5年前にグアルディオラにより開設された)では科学的な立ち位置からサッカーの余分な伝統的文化にメスを入れているのである。そこで今回の記事では特にFCバルセロナが戦争用語を残してしまっているサッカーというスポーツの言語領域にメスを入れていることに焦点をあてたい。

 

ジョアン氏によるとこれまで使われてきた伝統的とも言える「サッカー用語」とは「戦争用語(Language of war)」なのである。

  • Attack(攻撃する)
  • Defend(守備する)
  • Destroy(破壊する・打ち砕く)
  • Win at all costs(何が何でも勝て)
  • Aggression(攻撃性)
  • Enemy(敵)
  • Humiliate(恥をかかせる)
  • Selfishness(自己中心性)
  • Improve*(改善する)

ジョアン氏は「使用する言語こそが我々の(それぞれの)サッカーを産み出すのだ」と続ける。これを説明するにはコールター博士とそのチームが2016年の論文中に述べた「それぞれの文化に根付く考え方というのは(多くの場合使われている言葉に秘められている)意図的で無く当たり前と思われている信条のことであり、その固有のグループのスタンダードや価値観といった『彼らの常識』を産み出しているのである。」との説明があてはまるであろう。

こういった各組織の“常識”はその組織内にいる人々の物事への認知、そしてアクションを先導してしまうのである。このため、ある組織で「サッカーの課題(状況)」に対して同じ解決法が何度も何度も繰り返されるごとに、その方法がメンバー間で徐々に受け入れられ、記憶され、真理や道理として共有されていくのである。パス、ドリブル、ロングボール、総攻撃、クリエイティビティ・・・。

 

そこでジョアン氏、そしてFCバルセロナは「使用する言語こそが我々の(それぞれの)サッカーを産み出すのだ」という考えに基づき彼らのプレースタイルの価値観を埋め込んだ言語(ボキャブラリー)を創り、育んだのである。

 

それでは以下にFCバルセロナで使われている言葉をいくつか記そう。(カッコ内には同様の状況で使われがちな戦争サッカー用語を載せる。)

  • Possession phase (Attack) ポゼッションフェーズ(攻撃)
  • Recovering the ball (Defend) ボールを取り戻す(守備)
  • Create (Destroy) 創造する(破壊する・打ち砕く)
  • Enjoy, learn compete (Win in all cost) 楽しめ、学べ、競い合え (何が何でも勝て)
  • Assertiveness (Aggression) 自己主張性(攻撃性)
  • Opponent (Enemy) 相手 (敵)
  • Outperform (Humiliate) 相手を上回る(恥をかかせる)
  • Empathy (Selfishness) 共感、おもいやり(自己中心性)
  • Optimise* (Improve) 最善化・最適化する (改善する)

 

ジョアン氏、そしてFCバルセロナがこれほどまでに使う言葉を重要視するのは、それが選手の心理プロセスに影響があることを感じているからだ。そしてこの心理プロセスこそがモチベーションや創造性、さらには状況判断とアクションとなる。実は自分たちが使う言葉を見直すこととはポジティブ心理学における鍵であり、革新的なリーダー達も深く自信の信念を見出す際に行っていることなのである。 (ポジティブ心理学のトピックに関するララ・モスマン氏との対話はこちら訳注:記事元の会員対象、また関するウィキペディアはこちら。また、こちらのトピックに関わる記事として世界のベストコーチ達の特性というこちらのブログ記事も紹介されています。)

 

「文化心理学者は文化と心理プロセスはお互いに寄り添いあった関係だと考えている。そして個々の人間形成や習得の過程、さらには行動において、グループ内の言語・コミュニケーション・関係性・文化儀礼とその意義や信念、それに価値観がとても重要だとしている。」(Stambulova博士とRyba博士の2014年の論文より )

 

筆者である私のリサーチの観点から見ても、選手のクリエイティブなアクションや戦術的アプローチ、それに技術面での特性は、そこで使われる言葉や行われる対話によって決まっているといえるだろう。

多くの場合において、戦術やフィードバック、決まり文句、といった言語がコーチ、保護者、それにファンの伝統的な(そして多くの場合停滞してしまっている)物事の見方を形作っているのである。そしてそれが社会文化的な制限となってしまい、選手達のプレー選択をも決めてしまい、コーチとしてクリエイティブな選手を育てることが難しくなっているのである。

 

この記事の結論

もし使用する言語こそが我々の(それぞれの)サッカーを産み出す、つまり我々自信の行動やプレーを先導するのであれば、われわれはFCバルセロナを見習って、サッカー用語として伝統的に残って今っている言葉を変えるべきなのである。

 

*これらの単語には別の記事でその意味を説明をする必要があるが、端的に言ってImproveは状況の部分的な改善であり、Optimiseでは部分ごとに改善できない全体としての最善化を意味している。

(了)

Notes: I would like to thank Joan Vila Bosch for providing insight into workings of a club striving to, in his words, unitefootball  and science. I would also like to thank José Manuel Figueira and Auckland CityFootball  Club for organising this fantastic coach development opportunity. 

*this explanation requires another blog but quickly, improving suggest segmental progress while optimising recognises the interconnectedness of systems and that you can’t just improve one segment at a time.

 

References

Cassidy, T., & Kidman, L. (2010). Initiating a national coaching curriculum: a paradigmatic shift? Physical Education & Sport Pedagogy15(3), 307–322. http://doi.org/10.1080/17408980903409907

Stambulova, N. B., & Ryba, T. V. (2014). A critical review of career research and assistance through the cultural lens: towards cultural praxis of athletes’ careers. International Review of Sport and Exercise Psychology7(1), 1–17. http://doi.org/10.1080/1750984X.2013.851727

This article was originally published on www.playerdevelopmentproject.com.

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Tags: コーチの心構え  リサーチ  
By: Admin
Posted: 2016年05月10日 17:16

Reference: FC BARCELONA: DISMANTLING THE LANGUAGE OF WAR

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