人工芝のグラウンドはケガのリスクを高めるのか?

数年前までは、多くの運動選手、コーチ、トレーナーは、人工芝はケガの危険性が高まると感じていた。これは、他のアメフト、フィールドホッケー、ラクロスなどと同様にサッカーでも、人工芝はケガの危険性が高くなるという考えの傾向がみられていた。最近では、テクノロジーが進歩して、第3世代の良質な人工芝が多くのグラウンドで見られるようになってきた。しかし、この考えに変化はない。人工芝で、トレーニングをすることは、ケガのリスクを本当に高めているのだろうか?

過去、数年にわたって、いくつかのスポーツにおいて天然芝と人工芝のケガの発生率を比較して、サッカーに関してその研究をまとめ、人口芝でのケガのリスクが高まるかどうか、統計的に解析しようと試みた。

研究結果からは、人工芝でプレーしても、ケガのリスクは上昇しないということがわかった。その理由としては、人工芝におけるプレースタイルの変化や選手の認知の仕方が、ケガの発生に影響を与えていることがわかった。

 

 

今回の研究では、人工芝と天然芝でおこっているケガの種類を個々にみていくことにした。ケガの定義としては、1)モニターとなっている選手は天然芝と人工芝でどちらもプレーすること。2)トレーニング時間とケガの回数を逐一報告すること。3) ケガをどう定義するかという点では、1日以上トレーニングを休むケガとしている。

 

全体では、150万時間の延べトレーニング時間に対して、10,000件のケガが発生した。そのうち、3分の2のトレーニング時間が、天然芝でおこなわれて、約75%のケガが天然芝で発生している。トレーニングと試合を全体で見た時に、人工芝でのケガの発生確率は、天然芝と比較して10-14%低いことがわかった。これは、男子、女子、ユース、シニア、全て同じ結果であった。ケガの特徴としては、ひざ、足首、脚のケガは、人工芝では発生確率が低くなり、筋肉の痙攣は、どちらも同程度であった。

 

この結果は、人工芝でのプレーはケガのリスクを高めるという考えに一石を投じるものであり、特定の条件下で特定のケガについては、むしろリスクを低減させる可能性があるものであった。

 

結果については、どう説明するべきなのだろうか?

人工芝では、関節にかかる負担が軽減されることはわかったが、今回の調査は、乾いた、固い品質の低く、ところどころ剥げた部分があるような、ごく一般的な完璧には手入れの行き届いてない天然芝と比べたケースではある。しかし、私たちはプロが使うような高い品質の天然芝グランドと比較したデータは、今回は持ち合わせていない。もう一つの、要因としては、人工芝でサッカーをするとスタイルが少し変化するという点である。ボールスピードが上がることで動きの質も少し変わる。選手は、スライディングなどのフィジカルコンタクトの多い、アグレッシブなプレーが減り、これがケガの発生に影響している可能性も高い。

最後に、選手は、人工芝でのプレーにネガティブな認知をもっているのかもしれない。彼らは、人工芝でのプレーは、より疲労の度合いが高いと考え、また、より高い技術・スキルレベルが必要であると考える傾向がある。これは、ゲームスピードが速くなることや柔らかいピッチの上でプレーしていることが原因であると言えるかもしれない。この点では、彼らの感覚が正しいかわからないが、現実的には、疲労の認知やゲームスピードが、選手がゲームに入っていく心構えや姿勢を変えているのかもしれない。

人工芝と天然芝でのケガの発生度合いが異なるのには、いくつか理由がある。そして、これらの理由は、ピッチの表面の状態と深く結び付いている。

 

その他の要因は何かないのだろうか?

1つめの可能性は、「熱」である。人工芝では、38度もの熱さになることはあるが、これが原因でなにかが起きるという議論は今のところはほとんどない。

2つめは、この研究では該当しないが、人工芝の摩擦による皮膚の損傷である。ここでのケガの定義が、1日以上トレーニングを休むことであるため、スライディングタックルで皮膚を擦りむいてもケガにはならないだろう。人工芝の性質上、天然芝と比較すると、摩擦による皮膚の損傷は多いと言えるだろう。

3つめは、慢性的なケガに関しては、更に多くの情報が必要であるということである。今回の調査では、慢性的なケガとその時発生したケガを分けることは難しかったため、そこの線引きができていない可能性がある。

 

私たちの研究では、人工芝での試合やトレーニングはケガのリスクを高めるということは示さなかった。むしろ、一定の条件下では、ケガのリスクを低減するという考え方もできた。しかし、これが天然芝よりも安全であるということまでは言及できない。特に、人工芝では、選手のグラウンドに対する否定的な感情や疲労がより強く出るという可能性はあるかもしれない。ただ、研究によると、選手やコーチ、両親は、人工芝でのプレーを必要以上に心配することはなく、プレー中のケガの発生確率という点では、天然芝の時より悪いということはないことは知っていてもらいたい。(了)

 

 

↓ スマートフォンなどでLINEアプリをお使いの方は

  こちらからもトレーニングなどの情報がご覧いただけます。

友だち追加

 

友だち追加

Tags: リサーチ  
By:
Posted: 2016年04月15日 12:04

Reference: Injury Risk: Artificial Turf vs Natural Grass

トップページに戻る