コーチングにおけるピグマリオン効果について

ピグマリオン効果という言葉を聞いたことはあるだろうか? ご存知の方は、教育学や心理学に詳しい方かもしれないし、サッカーコーチの勉強を多面的に行う中で、この言葉に出会ったのかもしれない。 もちろん、ご存じない方も少しだけ興味をもって読み進めて頂ければ幸いである。

 ピグマリオン効果とは、アメリカの教育学者ロバート・ローゼンタールが提唱したもので、人間は期待されたとおりに成果を求めてしまう傾向があることを示すものである。

60年代のアメリカでの実験で、小学校のクラスを無差別に2つに分けて(ここではわかりやすくするため、Aクラス、Bクラスとする)、Aクラスの教師には、「このクラスの生徒は、今後、学力が伸びる可能性が高い生徒たちだけを集めたクラスである。」と伝えた。Bクラスの教師には、「このクラスの生徒は、今後学力の伸びはそれ程期待できないクラスである。」と伝えた。

もちろん、子供たちはそれを知らされていないし、担当教師以外はそれを知らない。また、当然であるが無差別に分けた、この2つのクラスの学力は変わらない。

 

 しかし、その後どういった変化が起きたかというと、Aクラスの子供たちは学力が向上し、Bクラスの子供たちは落ちてしまったのである。

教師以外には伝えられなかったはずなのに(しかも、それは事実ではない)、その通りになってしまったことには、教師の日々の接し方と期待のかけ方の違い、それを敏感に感じ取り、期待に応えようという子供たちの認知が大きな結果の差となって現れたことを示している。これは、動物(マウス)の実験で行っても、同じような結果が出るし、子供の学力だけでなく、スポーツ、子育て、そして仕事や恋愛といった大人の社会行動においても同じような効果がでている。

そして、逆に「あなたはダメだ」「どうぜ無理なんだから」といった言葉をかけ続けると、押さえつけられて成長機会が妨げされることもわかっている。(ゴーレム効果)

 

 さて、これをサッカーコーチの現場で考えてみると、いろいろ思い当たる場面はないだろうか。
「テクニックないんだから、ボール持つな」「身体が小さいんだから、当たり負けするよ」など、こういった言葉は、時に大人の意見としては正しい場面もあるだろう。しかし、基本的にはこれから成長していく子供たちにとっては、「いいセンスあるから、磨けばこれからもっとボールが持てるよ」「これから身体は大きくなるから、いまは当たり方覚えよう」といった声掛けの方が、受け取る子供たちは前向きに期待に応えようとするだろう。

また、決して選抜チームなどでなくても、自分たちのチームは特別な才能をもったチームだと思うことによって、選手への期待や関わり方を変えることはできる。そして、ジュニア世代だけでなく、ユース、シニアにおいてもこれは同じである。

 もしかしたら、「自分のコーチはこんな言葉かけてくれない」と思われるプレーヤーの読者もいるかもしれない。それであれば、「私はこれから伸びる可能性はまだまだあり、成長の余地はたくさんある選手なんだ」と自ら期待をかけてほしい。それも、ピグマリオン効果の1つである。

 

 ここでは、ピグマリオン効果が常に100%正しいということを伝えたいわけではない。自信過剰の選手には、あえて鼻っ柱を一度折り、それを成長のきっかけにすることもあるかもしれないし、高すぎる期待が選手にとって自由を奪う場面もある。

 しかし、あなた自身が何かを頑張ったときを思い出してほしい。乗り越える状況は決して簡単ではなくても、周囲にあなたに期待をする人がいたり、または自ら希望を持ち続ける確固たる意志があったときではないだろうか。あなたも周囲への適切な期待をかけて、良い方向へと導く一つの参考にして頂ければと思う。(了)

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Tags: コーチングアドバイス  
By: Admin
Posted: 2016年03月08日 17:19

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