レスターvs マンC ~レスターの劇的な2016シーズンはまだ続く~

プレミアリーグ第25節(2016年2月6日) 【マンチェスター・シティ 1-3 レスター・シティ】 レスターは、マンCとの確実な勝利で、5ポイント差でプレミアリーグのトップに立ち続けている。この日、ペジェグリーニの興味深い選択としては、左のMFにファビアン・デルフを先発させ、一方で攻撃的な左サイドバックであるコラロフを起用した。マフレズがこのサイドでプレーし、ヴァ―ディーも度々右サイドを突破していたことから、ここの左サイドは試合のキーとなったように感じる。この日の、右サイドにはサバレタが入っている。対して、ラニエリは4試合連続で同じスターティングイレブンを並べたゲームでもあった。

 

レスターの積極的なスタート

レスターは3分で先制したため、この試合では監督が0-0で「落ち着く」時間が全くないゲームとなってしまった。こういった先制点が早い段階で決まるゲームでは、両チームとも即座に対応しようとするためゲームのアプローチを判断することが難しくなる。しかしながら、フートの先制点は比較的予想されたパターンの形であるとも考えられる。これにより、マンCはポゼッションをして、レスターはカウンターを狙う形が明確となった。

レスターのスタートは極めて積極的であった。キックオフからマンCの右サイドの背後に長いダイアゴナルのパスを狙い、スローインになった直後には、すぐに囲い込んでいる。これはおそらく意図的な戦術であり、ポゼッションは譲っても、プレスをかけて相手に圧力を与えていくやり方をとった。レスターはハードワークをして、相手陣内でポゼッションを奪い返し、即座にゴールを狙う。こういったやり方は、以前からも、まれにではあるがサッカーでは採用される戦術でもあった。

 

フートの先制点

Robert Huth of Leicester City scores his team's first goal during the Barclays Premier League match between Manchester City and Leicester City at the Etihad Stadium on February 6, 2016 in Manchester, England.

レスターの先制点は、マフレズのフリーキックがフートに合い、デミチェリスに当たり入る極めてシンプルなゴールであった。クロスをシンプルに処理できなかったマンCのディフェンスのミスではあるが、ゴールそのものよりも興味深いものは、そのフリーキックの取り方であった。

前述のスローインからポゼッションを奪ったレスターは、すぐに右のマフレズにボールを預け、それにデルフとコラロフが対応した。デルフは、中にポジションを取り、マフレズの左足で内側に切れ込むことを警戒し、コラロフは、ポジションを上げて、マフレズをライン際に追い込もうとした。しかしながら、数的優位の状況をマフレズは喜んで受け入れて、右足でライン際を突破し、コラロフはファウルを余儀なくされた。

これは、マフレズが相手からの厳しい応対に、自分で突破しなければならないことを示している。そして、コラロフと協力してマフレズを押さえるためにデルフを起用したペジェグリーニの目論見は全く機能しなかった。3分間で、マンCのゲームプランは崩れてしまった。

 

レスターの深いブロック

0-1では、試合は期待通りの展開となっていった。レスターは深いディフェンスラインを敷き、岡崎がヴァ―ディーの後ろに位置する4-4-1-1システムとなった。ボールのない所でのこの2トップの動きは重要である。岡崎は、マンCの深い中盤のフェルナンジーニョをマークし、ヴァ―ディーはセンターバックからセントラルMFのトゥーレへのパスコースを消していた。これは、シティのパスコースを塞ぎ、攻撃をサイドバックへのパスコースに限定していた。

もちろん、レスターは4-4-2でもプレーすることはできる。ヴァ―ディーと岡崎はサイドをコンパクトにして、スペースを最小限にし、2人のセントラルMFのスペースをカバーする。ドリンクウォーターとカンテは、トゥーレがボールを持って前に出た時にはカバーして、それ以外の時はセンターバックと協力して深いポジションを維持する。これは、とても重要な事であり、センターバックのモルガンとフートは、プレミアリーグの基準で考えれば、極めてスピードに欠けるコンビである。しかしながら、彼らはライン間のスペースを埋めるために前に出る必要もないし、背後のスペースへ走る必要もない。

サイドバックを狭く設定することはこの点でも役に立つ。シンプソンとフクスは度々外のポジションを捨てる。彼らはもちろん必要なときはカバーするが、レスターの最優先事項はセンターを支配することである。彼らは多くの場合でセンターのポジションでボールを奪い返している。

ある場面では、トゥーレがポゼッションを失った瞬間に、レスターはカウンターに入っている。4人のプレーヤーがトゥーレを囲み、そして各個人がボールを奪うチャレンジをしている。これはレスターが今季、プレミアで最も多くのインターセプトをしているチームであることを示している。

 

シティの反撃

シティは前半良い形を作っていたが、レスターの素晴らしいディフェンスに阻まれている。

シルバからいくつかの良いシーンが生まれており、レスターはセンターに入ってくるシルバに手を焼いていた。シルバは小さなスペースでプレーできるためこのようなタイトな状況でもエアーポケットを見つける事ができ、ボールが入る前には背後を2、3度確認してワンタッチでもプレーしていた。

マンCはゲームを優位に進めていたが、左サイドでそれが終わってしまっていた。シルバはレスターが管理したい中央のゾーンで上手くプレーしていたが、レスターが比較的譲っても良いサイドでのコラロフのプレーが悪かった。マフレズは通常、マークに戻るが、たびたびカウンターアタックに備えてポジションを高く保っていた。しかし、コラロフのこのゾーンでのプレーが極めて悪かったため、ここから良いクロスが供給されることは無かった。

もちろん、これはフートとモルガンが、通常スピードを活かして背後を狙うアグエロに対して、クロスに対応するほうが楽であったという議論はある。ただ、アグエロが後半クロスからのヘッドで1点決めていることからも、この2人のセンターバックに対してクロスが100%安全であるというわけではなかったと言える。

レスターのもう一つの問題のシチュエーションは、モルガンがピッチ中央まで上がりボールを保持した時であった。パスミスをした際には、中央のディフェンスのポジションまで戻る時間がなく、たびたびアグエロを味方陣内中央でフリーにしてしまうことがあった。そのため、モルガンがアグエロに直面する必要性が度々起こり、イエローカードの起因となった。これは、基本的にはレスターが、センターバックは深くポジションを取りコンパクトを保つルールで戦っているためである。

 

レスターのカウンターアタック

もちろん、攻撃の大多数はレスターのカウンターアタックであった。私たちは、ヴァ―ディーのチャネルでのポジショニングの良さは知っており、これは特に逆サイドでのポジショニングは特筆すべきものであり、(理論的には)これによりレスターの斜めのパスに対してヴァ―ディーが常にセンターバックよりも先手を取る理由であった。ヴァ―ディーと岡崎は、ボールのない所では深くポジションを取り、ゴールのチャンスと見るやボックスの中に走り込み脅威となっていた。ヴァ―ディーは多くのロングボールに先に追いついていたし、岡崎は左サイドかの低いクロスに対して脅威となっていた。

レスターの中盤は、ドリンクウォーターとカンテともに前線に上がる自由を与えられていた。マンCの中盤の構成によるものではあるが、トゥーレは深い位置では効果的ではなく、フェルナンジーニョがスペースを埋めようとしていたが、できていなかった。レスターは、様々なカウンターアタックを試み、後半開始すぐにそれは結果となった。マフレズがピッチの中央から素晴らしい個人技で決めたものではあるが、ここでも興味深い点を2,3挙げたいと思う。

1つめは、ヴァ―ディーと岡崎は、センターバックの間隔を広げるために外側への動きを行った。これにより、マフレズが中央に走りこむスペースができた。今期のレスターは、できたスペースを常に利用しようとして、低い位置から走りこんでくる選手が多い点は注目に値する。2つめは、先制のフリーキックを奪った時のように、マフレズはシュートの前に右側にボールを運び出している。これは、対峙したデミチェリスにとって驚きであったようにみえた。マフレズが、左足だけでなく両方向にドリブルができれば、ほとんど止めようはないだろう。

フートの3点目は、またセットプレーからであった。レスターが今シーズンタイトルを取ることがあれば、セットプレーは極めて重要になるだろう。特に、先制点を取るという点では、彼らは(タイトルを取るチームができるような)引いたディフェンスに対してこじ開ける武器はない。だからこそ、セットプレーでゲームを動かすことによって、彼らは引いて自分たちの形でディフェンスをすることができる。

ゲームが3-0になったものの、ペジェグリーニの交代策は興味深いものであった。守備的MFのフェルナンジーニョをトゥーレの場所に使ったことは、シティの中盤がいかに機能していないかを物語っていた。また、デルフはより攻撃的なイヘアナチョに代わった。また、3人目の交代は、セリーナがシルバの代わりに入り、これは活力とハードワークを与えたいという意図以外にはないだろう。実際、アグエロのゴールのセリーナのクロスから生まれており、その点ではサイドのスペースの有効活用が出来たと言える。

 

結論

レスターの卓越したパフォーマンスは、今期の優れたシーズンを要約した試合であった。深くコンパクトで、よく組織されたディフェンスと鋭いカウンターアタック。机上ではとても単純であるが、レスターのボールを持たない時の組織は、間違いなく脅威である。シーズン序盤は、ヴァ―ディーとマフレズの才能に頼っていたが、彼らは現在ではよりまとまりのあるチームになっている。カンテ、岡崎、ドリンクウォーターの役割は重要性を増しているのは明らかである。

マンCのゲームプランは早い失点によって損なわれたが、それは拙いディフェンスが原因であった。マフレズは2人のDFを抜いていき、フリーキックのディフェンスも疎かであった。シティの攻撃は、左サイドのコラロフだけを経由するようになり、そこからのクロスは良くなかった。スターリングの中央での役割は物足りなく、彼は基本的にはスペースを必要とするタイプの選手である。本来、真ん中でプレーしたがるシルバやデルフが外目のポジションになっていたことで、レスターはDFの幅を極めて狭めて、中央に意識を向ける事が出来たと言える。(了)

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Tags: レポート  戦術分析  
By: Admin
Posted: 2016年02月13日 11:43

Reference: Manchester City 1-3 Leicester: early goal allows Leicester to play on the break

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