チームに根付く考え方、スタイルを変えるには

世界のサッカーを見渡せば、私たちが抱くステレオタイプなチームというのは確実に存在する。例えば、バルセロナの「華麗なパスサッカー」などはその典型的なものだろう。ブラジル代表なども、比較的共通するイメージを持つかもしれない。では、私たちが率いるチームはどういう価値観があるのだろうか。そして、それを変えるには何に気を付ければよいのだろうか。

<ケース>

A大学サッカー部のコーチを務める山下(仮名)は、今後のチーム作りの方向性について悩んでいた。A大学サッカー部は、所属リーグの1部にいる。スポーツ推薦がある学校ではないため、高校時代に華々しい経歴がある選手はあまり多くない。同じリーグには推薦で生徒を入れている学校もあるため、その分個々の能力では劣る印象がある。1部残留が目標であり、2部落ちれば1部昇格が目標になるような形で、1部と2部の行ったり来たりを繰り返していた。今年は2部から昇格し、なんとしても1部に残留したいという想いがあった。

山下が感じているのは、チームをどう作っていくかであった。今の大学生は、自分の学生時代と比較すれば総じて技術的に優れている。A大学に入部してくる生徒も足元の技術は比較的高く、短いパスを好み丁寧にボールを保持するサッカーを好む傾向にあると感じている。一方で、それはどこの大学サッカー部も同じであり、能力の高い選手がいる1部リーグになると押し込まれる展開が多く、それがそのまま試合結果に反映されている傾向があった。そのため、1部リーグを戦うには、少々チームとしての頼りなさも感じていた。大学というのは育成年代ではない。大人のチームとして「結果」につながるルートを模索する必要性があるのではないかというのが、山下自身が感じる所であった。

これまでも、相手にあわせて戦術やシステムを変更したり、部分的に選手を使い分けたりすることはあったものの、それで良い結果につながることはなく、選手からも普段の戦い方でやったほうが結果がでるのではないかという意見も出ていた。

さて、山下は過去の失敗をふまえて、何から着手していけばいいのだろうか。

 

ここでは、チームの行動に影響を与える7つのS(要素)という考えを紹介したいと思う。

【ハードのS】 → コーチが比較的短時間で変更して、コントロールできるもの

1.戦略(Strategy):競争に勝つための作戦

2.システム(System):コーチが掲げる仕組み作りとやり方の変更など

3.チームの構造:フォーメーションの変更など

【ソフトのS】 → チームに関わる全ての人間で決定していくもので、簡単にはコントロールしにくいもの

4.スキル(Skill):選手やチームが持っている特定の能力

5.人材(Staff):どのようなプレーヤーがおり、何を育成するか、及びされているか

6.スタイル(Style):チームの文化やスタイル

7.共通価値観(Shared Value):チームの拠り所となる価値観があるか 

 

例えば、山下の過去に着手した変更部分は主にハード面になる。コーチが短期間でフォーメーションだけを変えても定着せずに上手く行かないこともある。(ただ、ハードがいけないということではなく、ハード部分の変更も必要であり、これが上手く行くケースもある。)

多くの場合はハード面が変革の中心になってしまい、ソフト面がついてこないことが多い。そして、ソフト面の改革というのは、時間を要する傾向が高い。

このケースで、仮に、山下が1部リーグではポゼッションをするよりも、より守備で奔走でき現実的に勝ち点を稼いでいくとした場合、ソフト面でもいろいろな変更が求められる。一例をあげれば、

スキル面:守備のブロックやカバーリングの練習、運動量UPなど

人材:セットプレーやロングスローなどで活かせる選手を起用するなど

スタイル:走り勝つチーム、セットプレーから点を取れるチーム、リーグ最少失点ができるチームなど

共通価値観:選手にセーフティーファーストを徹底させる、常に数的優位をつくるなど

 

これを選手に定着させることは、フォーメーションや選手配置の変更よりも大変な作業になるだろうことは、コーチであれば、想像に難しくないと思う。そして、そこには衝突や葛藤があり、これまでの起用選手をサブにしたり、選手からの反発があり(特にこれまでの中心選手に多い)、最悪の場合、辞めてしまうこともあるかもしれない。

当然、逆に「とことんパスをつなぐサッカー」という選択肢をとることで、チーム全員がそれを目指していくこともできるし、それが正解になる可能性もある。どちらも常に正解となることはないものの、大事なことはチームを変革する時には、コーチが変更できる部分だけに目を向けずに、チームに流れる価値観や習慣にも目を向けて、選手を次のステージに導いてほしいと思う。(了)

友だち追加

Tags: コーチの心構え  
By: Admin
Posted: 2015年05月02日 18:42

トップページに戻る