バイエルン:内寄りのサイドバック

バイエルン・ミュンヘンのペップ・グアルディオラ監督は就任してから現在までの18ヶ月間で、ユップ・ハインケス前監督が残した3冠チームを、以前のスタイルの形跡がほとんど見えないほどに進化させた。ある意味固定的だった各選手のポジショニングは状況(問題)に対応する形に置き換えられ、その中でも特に大きな変更点は、1つのゾーンで4つのポジションをカバーしてしまう「内寄りの両サイドバック」の導入だろう。

この両サイドバックのポジショニングによってチームはセンターとサイドのエリアにおける攻守両面でより柔軟(フレキシブル)な対応が可能となり、さらに攻守の切り替えの場面でも、この選手達がDFラインに下がり4バックを形成する、もしくは守備的MFと両CBの3角形に背後をカバーされる形で前にプレスするといった選択も出来る。

 

内寄りの両サイドバック/ハーフバックを置いた4-3-3フォーメーション



上図から見て取れるように、ハーフバックの2人はセンターとサイドの選手の間のスペース(訳者補注:英サッカー用語で「チャンネル」)に入り、そしてMFとDFラインの間に入る。他のポジションがある程度「固定(フィックス)」されているように見える中、このポジションがチームのシステムに柔軟性を与えている。

実際にはグアルディオラ監督のシステムにおいて選手達は圧倒的なポジション柔軟性を武器に走り込みを繰り返しながら、常に数的有利やダイアモンドの形を作ろうとしているが、その基礎には、通常よりやや狭い位置にポジションを取っているこのサイドバック/ハーフバックの存在があるのだ。

 

チャンネルゾーンからの攻撃の角度


ラフィーニャが「チャンネル」の位置にいることで、(訳者補注:この状況ではサイドバックはタッチライン際まで広がるのが普通である。)ゴールにより近い位置でパスを受け、攻撃することが出来る。ここでのポイントは通常のサイドバックのポジションでは、2~3タッチでプレーする必要があり、またそこからのパスも長くなるので、相手DFはしっかりと時間をかけて対応や調整をすることができる。その点、この画像の位置であれば、1タッチで攻撃を開始できる。

 

中央エリアでの数的有利


4-4-2フォーメーションのチームが相手の場合、4-3-3や4-2-3-1を採用し中央エリアを3vs2にして掌握することがよくなされる方法である。もし4-4-1-1を選択すると、中央で3vs3となることが多く、より多くのパス交換やボール回しが中盤の掌握に必要となる。この状況の改善のためにサイドハーフをより中央寄りにプレーさせ、結果的に4vs3をつくることもある。ただ、その対処法では相手のサイドプレーヤーもより内側に入りコンパクトになるため、結局攻撃がし辛くなってしまう。

グアルディオラ監督はこの解決法として両サイドバックを前方内寄りに押し上げ、サイドハーフは通常どおり高く広い位置に残しておくことを選んだのである。これにより中央もサイドも突破のチャンスがある状況となり、同時に相手MFにとっては、どの選手をマークするべきか、状況によっては広く張ったサイドハーフまで追いかけ5バックや6バックのようになるべきなのか、といった状況判断を迫られることとなる。

通常では守備側はコンパクトにしながら中央寄りにプレーするため、サイドバックのいるタッチライン際のエリアでは1vs1で対応するものだが、より選択肢の多いハーフバックのポジションではその対応がより難しくなる。

 

突破の機会を探る


上の画像ではラームとアラバはしっかりと目的をもって、このポジションをとっている。このチャンネルの位置でパスを受けることで、縦パスを直接相手MF陣の間へ、もしくは相手MF陣とDF陣の間のスペースへ出すことが出来る。この局面ではラームは3vs2の状況が出来ている相手MFとDFの間へパスの機会を探っている。

 

相手チームに陣形を作らせず、スペースを空けさせる


味方サイドバックが外に開いているままでは1vs1の突破を武器にしているウイングの選手をあえて孤立させることはなかなか難しい。ウイングがボールを持ってもすぐにサイドバックに対応していた相手サイドハーフが戻り1vs2としてしまうからである。ここでサイドバックを内側に絞らせることで相手サイドハーフも内寄りになるため、味方ウイングが相手サイドバックと1vs1の局面を作ることが可能となる。

(訳者補注:上の画像でも黒い四角で示されたようにラームとアラバが内に絞っているために、黄色丸のロッベンとリベリーが1vs1のチャンスを作れている。)

 

攻→守の切り替え前から、準備の出来ているポジショニング


内寄りでサイドバックがプレーすることは、チームとしてはピッチ全体の幅を使いながらも各選手間の距離は短くなり、攻守の切り替えの際には守備的により安定したポジションからのプレスをかけることが出来る。逆にもしサイドバックが広がっていた場合、選手間の距離も広くなり、特に内側のスペースが空いたままとなってしまいかねない。これに対して「内寄りのサイドバック」がいることで、中央エリアでの縦のパスコースがブロック出来ており、さらに相手チームはプレスを回避していく必要があるため、結果的にゴールまでの道筋が長く、遅くなることとなる。

(了)

この記事はStevie Grieve氏により著され、投稿元のWORLD CLASS COACHINGの許可の上、翻訳・転載しております。

http://www.worldclasscoaching.com/

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Tags: グアルディオラ  全年齢対象  
By: Admin
Posted: 2015年01月06日 12:22

Reference: Bayern’s Move from Fixed to Flexible

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