パス成功率・ボール支配率から読み取るメッセージ

~ボールポゼッションのもう一つの鍵とは~

先週好評だったグラフ記事につづいて、ぜひ今週も一つグラフを紹介しよう。(編集者注:昨週の記事の翻訳版は未発表です。)

 

今回のグラフはきっととても分かりやすいものだと思う。下軸の数値は1試合の平均ボール支配率(ポゼッション)のパーセントを、縦軸はパスの成功率のパーセントを示している。

基本的には両データともチームパフォーマンスの同じような分野を反映すると理解されているだろう。もちろんそれは「チームとしてどれだけパスをまわせるか」ということだ。基本的にパス成功率が高ければ、ボール支配率も高くなる。また逆に言うと、チームとしてボールポゼッションを重要視していれば選手はより確実なパスコースを選択するはずで、そうなるとパス成功率は自然と高くなる。シンプルな関連性だと言えるだろう。

さて、今回下に載せた今シーズンのイングランド・プレミアリーグチームのパフォーマンスグラフもその関連性を明確に示しているといえるだろう。

総勢20チームの1試合平均ボールポゼッションは37%から59%までに収まり、パス成功率は71%から86%であった。そして一番下のクリスタルパレスからマンチェスターシティとアーセナルまでとてもクリアに上記の関連性を見せていることがわかる。

 

ただ20チームの中で唯一ここで取り上げ詳しく見るべきデータを示したのはサウザンプトンだろう。サウザンプトンはリーグ内でトップのボール支配率(58.6%)を記録しながらパス成功率は9位(81.4%)にあまんじている。これは他の全チームが示した通常の傾向からははみ出していることが分かるだろう。

特に他クラブの座標点から近似直線を引いてみるとどれほどサウザンプトンが特徴的なチームかが見て取れるだろう。(下図)

さてそれでは、一体なぜこのような結果になったのだろう。

実は端的に言って「ボール支配率」とは、パス回しがどれだけ効果的にできたか、だけを示すものではない。それに加えてボール支配率では、失ったボールをどれだけ短時間で取り返すかということも重要なポイントになるのだ。

 

サッカー界ではよく知られていることではあるが今シーズンのサウザンプトンを率いたマウリシオ・ポチェッティーノ監督はプレッシングサッカーに重きを置くマルセロ・ビエルサ監督に大きく影響を受けた。

そのビエルサ曰く:私のチームのシンプルなモットーとは、「ボールをとにかく早く、とにかく高い位置で奪い返す」こと。そしてそのために私はボールを奪うことにチーム全員が参加することとしている。バックからフォーワードまでとにかく全員がである。

ビエルサがアスレチック・ビルバオを率いていたころ、やはり今回のサウザンプトンと同様の数値が出ていた。パス成功率は平均的ながらボール支配率は際立って高かったのだ。

 

 

またビエルサはペップ・グアルディオラにも大きな影響を与えている。

グアルディオラが指揮した5シーズン(チト・ビラノバの時期も含める)、全ての試合のボール支配率においてFCバルセロナは相手チームを上回った。そしてこの記録はタタ・マルティーノ監督に変わった今シーズン、ラージョ・バジェカーノ戦にて4-0で勝利をしたものの止まってしまうこととなった。

 

マルティーノ監督指揮下になってバルセロナのパスミスが多くなったわけではない。彼らはより自陣ゴールに近い位置に引いてからボールを奪うようになったのである。

実際に過去5シーズン、下の図のようにバルセロナのパス成功率(赤線)にほぼ差は無い。しかし1試合の平均ボール支配率(青線)はピークだった2011/12シーズンに比べておよそ5パーセントも今シーズンは下がっている。

ここ数シーズンにおけるカウンターアタックサッカーの復権もあり、かつてバルセロナがサッカー界を席巻していた時期に比べてボール支配率自体話題に上らず、またその数値が示すメッセージ性も弱くなっているのかもしれない。しかし、バルセロナのプレッシングディフェンスが彼らのパス回しと同じレベルで語られるようになるには2シーズンほどの時間を必要とした。そして実はそのプレスこそが過去に類を見ないほどのボール支配率を誇ったバルセロナサッカーのもう一つの鍵だったのだ。

 

今シーズンサウザンプトンが見せたように、パス回しでは平均的なレベルでも、ボールポゼッションでリーグトップとなることはできるのだ。そのためにはなによりピッチの高い位置でのプレッシングが必要なのである。

(了)

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Tags: リサーチ  データ  
By: Admin
Posted: 2014年05月19日 16:48

Reference: Pass completion and possession

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