現代ワイドプレーヤーの特別なコーチング方法

シーズン開幕から多くの人が感じていたように、なぜチェルシーのモウリーニョ監督のもとで、ホアン・マタが試合に入っていけないかを、私も不思議に思っている。(訳注:ホアン・マタは1月にマンUに移籍)

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素晴らしい才能を与えられ、瞬く間にディフェンスに穴を開けることができる選手は、プレミアリーグのどのチームであってもメンバーシートに一番最初に書かれるべきである。

しかし、先日のゲームで、モウリーニョはマタがなぜ彼のシステムにフィットしないかを全世界に示した。そして、より重要な問題として、マタのようなタイプの選手が、現代サッカーのシステムに適合するのかどうか?という疑問を私たちに残した。

チェルシーはアウェーで、マンチェスター・シティを破り、そのゲームで攻撃的なサイドプレーヤーを務めたウィリアンとアザールは、チームのディフェンスとオフェンスの中で素晴らしい活躍をした。彼らは、カウンターアタックではスピードとパワーを示し、チームのためにディフェンスもいとわなかった。そして、ボールポゼッションが35%にも関わらず、チェルシーが勝利に値するクォリティを持っていることを充分に示した。

 

月曜日のテレビ番組で、解説者のギャリ―・ネビル氏は、現代サッカーでのワイドプレーヤーの進化について話した。「サイドバックはウィンガーでなければならず、ウィンガーはサイドバックにもならなければいけない。これに関しては疑いの余地はない」と。

ヨーロッパの大会で成功を収めるドルトムントやバイエルンのようなドイツのチームがこういったスタイルをとっている。この考えに賛同する者なら、この試合の中での決勝ゴールがその考えを一層際立たせるだろう。

マンチェスター・シティの左サイドのアタッカーであるダビド・シルバには、ゴールに関連した2つの決定的な判断があった。

一つ目は、シティが多くのボールポゼッションをしている時には、シルバは真ん中にポジションを取りたがることである。二つ目は、彼は自陣に戻り、チームディフェンスのために働こうという意思を示さなかったことである。(写真は、ゴールの数秒前に撮影されたものであり、それぞれの選手のポジションを示している。)結果として、これが、右サイドバックのイバノビッチがチェルシーの攻撃に加担し、アタッキングサードに侵入することで、彼の決勝ゴールを許した。

我々は、今シーズン、マンチェスター・シティの象徴として活躍するシルバ一人を非難することは出来ない。しかし、モウリーニョ監督だったら、このようなシルバの判断を許容しただろうか?私は、マタのマンチェスター・ユナイテッドへの移籍がこの質問への答えになっていると思う。

(※左サイドアタッカーのシルバ、右サイドバックのイバノヴィッチのポジション図)

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最近、フィラデルフィアのNSCAA(全米サッカーコーチ協会)の定例総会に出席した際に、デイブ・カロランが、現代サッカーでのフィジカルへの要求に関して素晴らしいプレゼンテーションを行い、これは私たちが、今後どのようにコーチングを行うのか大きな影響を与えた。

彼は、ダニエル・アウベス(※バルセロナの右サイドバック)を現代サッカーにおいて「新しいポジション」で活躍する選手として位置付けた。アウベスは主に守備的な役割を担っているかもしれないが、多くの時間を相手陣内でプレーし、バルセロナのアタッカーとしても不可欠な役割を担っている。

アウベスへ要求される平均的なフィジカル負荷は、1試合で11.30Kmの走行量に加え、平均46秒ごとに繰り返される39本ものスプリントダッシュである。これらの要求は、チームの中でも最も高いフィジカル要素となっている。アウベスは固定されたポジションを持っていないかもしれないが、チームの枠組みの中で右サイド全体をカバーすることを期待されており、複数の役割に責任を負っている。

さて、先日のチェルシーの試合に戻ると、イバノヴィッチがこの役割を担っていることがわかるだろう。これは、彼のゲーム中の平均的なポジションがハーフウェイライン上であったという事実を裏付けるものである。(下図を参照)

 

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このワイドプレーヤーの進化は様々な形でコーチ達に変化を求めるだろう。戦術な部分で言えば、我々は両サイドにボール扱いに長けた、才能のある選手を見つけることができるだろうか?

明らかに、マタ/シルバのようなタイプのアタッカーは、ディフェンシブな役割に多くを期待できない選手たちである。しかし、前線に飛び出すことができない、センターバックのラインに常にいる古典的なサイドバックではどうなのだろうか?

現代では、両方の特徴を兼ね備えた選手でないと、多くの戦術的な部分をあきらめないといけないし、またトップクラスのチームに対しては弱みとして利用されるだろう。

コーチたちの次のチャレンジとしては、このような選手をどう育成していくのか?ということだろう。今日のトレーニングセッションでは、この独特のポジションでの要求に対応できる能力が備えられるよう、テクニックにもフィジカルにも優れている選手を、さらにもう一段高いレベルに引き上げるトレーニング強度が要求される。

また、このチャレンジは、ピッチ外にも及ぶだろう。これらのプレーヤーは、彼らのポテンシャルを最大化するために、スポーツ科学専門家からの多少の協力を得ることで、ワールドクラスのアスリート達がポジションを占めている現代サッカーの中で成功を収めることができるだろう。

そして、サッカーの心理学的な面も忘れないでもらいたい。ジョゼ・モウリーニョがどのようにして何十億円もの才能あるタレントに自陣ゴールへのディフェンスに奔走させて、彼らが過去に経験もしたことないような負荷の高い役割を担うように説得するのだろうか?ゲームの後に、モウリーニョは自分たちのチームは、マンチェスター・シティがボールを持っている時にも、「謙虚でハードワークの準備ができている」と言った。

彼は、能力と同じくらいキャラクターにも特徴を持つコーチである。それゆえに、「ディテール(細かいところ)のマスター」との評判もあるほどである。ビッグタイトルは、時として小さな違いで決まることも多い。5月にプレミアシップのトロフィーが掲げられる時に、小さな違いがどれほどの違いになるのかは、誰も知る由もない。(了)

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Tags: モウリーニョ  コーチングアドバイス  サイドバック  
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Posted: 2014年03月15日 17:51

Reference: THE SPECIAL WAY OF COACHING WIDE PLAYERS

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