HIT=ハイ・インテシティー・トレーニング  (下)

サッカーにおける体力の要素はとても決定的なものである。サッカー関係者にはよく知られていることだが、サッカー選手は1試合の間に5-8マイル(訳注:8-12kmほど)もの距離を走る。

このため体力という要素はよいプレーパフォーマンスの決定的なベースであり、選手達には発達した有酸素運動能力が求められる。そしてまた実際の試合ではさらにダッシュや急激なスタート・ストップそれにジャンプなど多くの無酸素運動力も要求される。

さて、選手の体力レベルを上げるより効果的な方法とは何なのだろうか?そして選手達が持久力(有酸素運動能力)を強化しながら同時に無酸素運動能力の向上も努めるにはどうしたらいいのだろう?

前回の記事ではHIT=ハイ・インテンシティー(インターバル)トレーニングでのVO2Max(最大酸素摂取量)強化に関して紹介した。そして最近のデンマークの研究者によるリサーチでその実際の効果、つまり体力的パフェーマンスの変化が紹介され、その内容には数多くのサッカートレーニングへのヒントが含まれていた。

 

このリサーチは合計19編ものスポーツ科学論文を精査しその実施条件や方法などからこの方式のトレーニングコンセプトに普遍的なトレーニング効果を調査したものである。

まず、これらの実験トレーニングは3-7回の30秒間の全力運動を週に3回の頻度で行うというものだった。なお、セット間の休息は2-5分ほどである。多くの実験ではジム用室内バイクが使われ、それ以外はダッシュ走で行われた。実験期間は2-8週間である。
 

それぞれの論文ではこの方式のトレーニングはSIT=スプリントインターバルトレーニングと呼ばれたりHIT=ハイインテンシティーインターバルトレーニングなどと名付けられている。そしてこれらのトレーニングコンセプトとはつまり、短時間での大きな運動量でのエクササイズをほぼ全回復できるほどのインターバルで繰り返すものである。

 

それぞれの結果をまとめると、このコンセプト(HIT)で行われたトレーニングでは4-13%のVO2maxの向上が認められ、この効果はかつてから行われてきた通常の体力走(長い距離を長時間走る)と比べて同様のものなのである。つまり、HITでは昔ながらの体力走の3分の1ほどの時間をかけてそれとほぼ同様の結果を得ているのである。

またHITでは持久力向上に加え、さらに「走りの効率性の向上」もみられた。走りの効率性の向上とは同様のトレーニング負荷の運動をより少ないエネルギー消費で行える状況を言う。もしかしたらこれはダッシュの際の体の使い方がトレーニングにおいて改善されたことによるのかもしれないが、とにかくサッカーの試合の中ではより体力消費を抑えられれば試合の後半それがで大きく生きることは確かだろう。

加えて無酸素運動能力もHITを通じて向上が見られている。短時間運動での筋疲労度が減少することで、ショートダッシュなどの運動における筋力発揮状況が向上していたのだ。このことは試合中にダッシュを繰り返す能力として現れるはずであり、この分野での向上は通常の持久走トレーニングでは見込めないものでる。(長距離走ではなかなか大きな運動負荷のある短時間運動の強化にはつながらない。)



上記のような能力改善(向上)の理由としてはトレーニングによる、いくつかの身体的、そして生体的な適応が上げられる。まず循環器系の機能強化が運動中の筋肉への酸素運搬力の向上により果たされる。そして筋肉繊維中では、酸素をエネルギーに変える力も強化され、さらにはグリコーゲンの蓄積量も増大する。そして特にHITがより効果的といえるのは、こういった変化が速筋と遅筋両方で起こるということである。ちなみに通常の持久走トレーニングでは速筋繊維はなかなか運動に利用されず結果的に遅筋のみにトレーニング効果が現れる。

このような身体の適応が選手の有酸素運動力の発達、そして長時間の高負荷運動でも無酸素運動力への負担を減らすことを可能とするのである。


さて、このHITのコンセプトをサッカーチームのトレーニングに関連づけるまとめとしては:

まずHITによりVO2maxと短時間運動時の放出パワー量の両方が増大する、つまり無酸素・有酸素ともにその運動能力が向上する。サッカーのパフォーマンスにおける2つの大きな体力要素である。

そしてコーチングスタッフは常日頃チームの限られた活動時間をどのように効率的に利用できるかに頭を悩ませているはずだ。技術力、戦術理解力などサッカーのトレーニングには様々な要素を落とし込む必要があり、結局体力トレーニングにはなかなか時間を費やせないこともある。しかし、一般的なHITは30秒ダッシュ(200m弱)を5分ほどインターバルで3-5セットほど行うもので、15分ほどしかからない。通常の持久走(30-40分)に比べると大幅に時間の節約が可能なのだ。

先ほども紹介した前回の記事でもScience of Soccer(記事提供元)はアメリカの女子大学生サッカークラブのオフシーズンに行ったHIT実験を取り上げている。

こちらのトレーニングでも持久力と短時間の反復ダッシュ力の向上があり、また費やした時間は持久走組の半分ほどであった。


つまり、体力をより短時間で向上させ、結果的にそのほかの分野のトレーニングに長い時間が費やせるHIT方式とはより見返りの大きいトレーニング方法なのではないだろうか。

(了)


References

Sloth M, Sloth D, Overgaard K, Dalgas U (2013) Effects of sprint interval training on VO2max and aerobic exercise performance: A systematic review and meta-analysis. Scandinavian Journal of Medicine and Science in Sports, doi:10.1111/sms.12092

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Tags: データ  リサーチ  
By:
Posted: 2013年12月03日 14:32

Reference: High-Intensity, Sprint-Interval Training and Fitness

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