HIT=ハイ・インテシティー・トレーニング  (上)

~体力トレーニングとそれに費やす時間に関して~ サッカーコーチにとって「チームトレーニング時間量」とは限りある重要な資産であり、それをどこまで有効利用できるかが非常に重要な課題である。

実はアメリカの大学サッカーではそれがよりクリアな環境にある。学生の本分である学業成績が厳しく審査されていると同時に、NCAA(全米大学体育協会)によりトレーニング時間に規則が設けられているのだ。このため、学生サッカー関係者たちにとってトレーニングプランニングにおける大きな課題とは、限られた時間の中で技術・戦術に加え体力分野の向上をどのように行うかということだ。

 

その中で昨今注目されているのが、HIT(ハイ・インテンシティー・トレーニング)と呼ばれる方式での体力強化である。この方式では選手達はかつての長距離走などとは違い数回の高強度な短時間の運動を行うことで持久力強化に努める。

 

ここで最近大学女子サッカーチームにおいて行われたHIT方式での体力強化研究を紹介したい。結果から言うとHIT方式でのトレーニングでは長距離走に比べて短時間で同様のVO2max(最大酸素摂取量=肺活量の基準)の向上が示されている。

 


実験トレーニングが行われたのはオレゴン州のウィラメット大学女子サッカーチーム(3部リーグ所属)全選手で、5週間にわたり、公式戦のない春季トレーニングシーズンを使って行われた。チームの半数の選手は通常どおりの長距離走トレーニングを行い、残りの半数はHITプログラムに従ってトレーニングを行った。

 

実験結果の比較のためにトレーニング前後には各選手のそれぞれ専門の装置で計測されたVO2max値と、またYo-Yo インターミッテントリカバリーテストの結果が記録された。なおYo-Yoインターミッテントリカバリーテストとは徐々にスピードが上がるシャトルランを短時間の回復時間を挟んで何度も行いどのレベルまでテストについていいけるかで体力値を測定するものだ。(訳注:このテストに関してはこちらのJFAのPDF資料に少し紹介があります。)

 

なお5週間の研究期間中、それぞれのトレーニングは週2回ずつ行われた。1回のトレーニングではHITグループは30秒間ダッシュを4分30秒の休憩(3週目以降は成長に合わせ、3分30秒の休憩とした)を挟んで5セット行った。この実験にかけたトレーニング時間は25分(3週目以降は20分)であった。ちなみに持久走グループは40分間走をVO2maxの80%で行った。

 

研究では、HITグループ、持久走グループ共に5週間後にはVO2maxで4% (50.7-52.7 O2/kg/min)、そしてYo-Yoインターミッテントテストの方では12%の向上が見られた。効果は非常に似たものである。

しかしここで重要なことは、同じような結果をHITプログラムでは長距離走と比べほぼ半分ほどの時間を使って得られているということでだ。HITグループの20-25分、持久走グループの40分間という練習時間は、HITのより優れた効率性を示していると実験に携わった研究者達は方向区している。

 

NCAAのルールで厳しく制約されたトレーニング時間の中で約20分の時間短縮が出来れば、残ったより多くの時間を技術的・戦術的なトレーニングに割りふることができる。そしてもちろん体力練習にかけるが時間が短く効果的であれば、サッカー以外のこと、つまりは学業などに選手が集中しやすくなることも確かだろう。

 

この研究と同様の報告は他の研究者もレポートしており、運動強度が高く、かける時間の短いHITプログラムはより効率的なVO2max増大のための、つまりは持久力向上のためトレーニングだとしている。

 

これらの研究結果をもとにすでにトレーニング時間における技術・チーム戦術・体力に配慮したい多くのサッカーコーチ達がその効率性を実感している。(了)
 

Reference

Rowan AE, Kueffner TE, Stavrianeas S (2012) Short duration high-intensity training improves aerobic conditioning of female college soccer players. International Journal of Exercise Science, 5: 232-238.

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Tags: データ  リサーチ  
By:
Posted: 2013年11月12日 14:46

Reference: High Intensity Training, Fitness and Training Time

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