攻撃の原則:機動性=運動量とその質

サッカーの攻撃におけるモビリティー=機動性とは、ボールを持っていないときの動き全体を意味する。90分間のサッカーの試合中、選手は何キロもの距離を動き、ハードに運動することが要求される。しかし...

考えも無しにとにかく走りまわってしまうと、チームの陣形を崩し、さらには試合終盤で体力がもたなかったりと、逆効果にすらなりかねない。

効果的な攻撃に要求される走りとは、賢く、正しいタイミングで行われるものなのである。高い運動量と質の高い走りは常にセットで考えられないといけない。

 

サッカー選手のボールの無いところでの走り(=フリーランニング)には、ひらめきで行われるものと前もって練習されたものの両方がある。そして各局面でチームメイトと相手選手のそれぞれの位置取り、それにその時のボールの場所をもとに各選手がどんなフリーランニングをするべきかを判断している。

 

ところで、最も決定的なフリーランニングとはペネトレーションを果たすためのものであり、それこそが賢い走りだといえるだろう。さらに走り出す際にはチームメイトの位置関係などからチャンスとリスクのバランスに配慮した上で行うことが必要となる。良い動きとは、チームの形やボールポゼッションを犠牲せずにペネトレーションを果たすものなのだ。

 

一般的に言って、運動量の少ない攻撃の選手は相手にとって危険度が低い。というのも守備の選手は常にボールとマークしている相手選手を同一視野に入れておきたい。そのため、運動量の多い選手に対応する方が守備側の選手にとって、常にポジション修正が要求されるためより危険な選手となる。また、攻撃の選手がフリーランニングする際、マークしている選手にとっては、追いかけマークをし続けるべきか、スペースのカバーをするためにその位置を動かないでいるべきかの状況判断が求められる。そしてどちらを選んでも守備の選手にとってはリスクがある。ついていくことにした場合そのエリアは新しく出来たスペースとなって他の選手に利用されるかもしれないし、一方残ってエリアをカバーしておこうと判断した場合は、フリーランニングをしかけた攻撃側の選手はスペースでボールを受け、しかも落ち着いて前を向くことができるかもしれない。

 

大きく分けて、フリーランニングは次の2種類のものがあるといえる。1)空いたスペースへ走り込む  2)スペースを作るために走る。

上の図117では、空いたスペースに走り込む動きを示しており、左SBのD1と右MFのM4がフリーランニングを仕掛けている。この状況であればM2からのボールを両選手ともに受けることができる。

一方図118からは、スペースを作る動きの例が見てとれる。FWのF1がボールに向かって動くことで、相手DFを引きつけ、味方のF2の走り込めるスペースを作っている。また同時にピッチの別の部分では、MFのM1がボールを持っているM2から離れることで彼をマークしている選手を遠ざけ、D2が前の位置でボールをもらえるスペースを作っている。

ところでこの図では「味方選手のためのスペースを作る動き」を紹介しているが、選手達はそれに加えて「自分自身のスペースを作る動き」も試合中頻繁に行っている。このような動きとは多くの場合、ダミー・ラン、すなわち一方向に動いてマークしている相手選手をひきつけた上で、瞬間的なターンで相手を置き去りにするというものである。
 

多くのコーチ達が様々な工夫を凝らした名前をつけることでオフ・ザ・ボールの選手達の動き方を指導しようとしてきた。今回は以下の図119から図131を通じてよく見られる行われるフリーランニングの形をいくつか紹介しよう。

ただ言い表し方に関わらず、ほとんどのフリーランニングは上記2つのどちらかに当てはまるといえる。つまり、「スペースへの走り込み」もしくは「スペースをつくるための動き」のどちらかなのである。

 

オーバーラップ・ラン(図119)

オーバーラップとはボールを持った選手より後方にいる選手がボールを持っている選手の前方のスペースへ走りこむ動きである。多くの場合はサイドバックが行うが中盤の選手も攻撃参加時に行うことがある。


ダイアゴナル・ラン(図120)

フリーランニング中の選手へパスを通す場合、理想の組み合わせとしては「ストレートな前方へのパスとダイアゴナル(斜め)・ラン」、もしくは「ダイアゴナル・パスとストレートなラン」が挙げられる。このどちらも、ボールを受ける選手がボールへ背を向けないですむ状況を示している。

これはつまりパスの受け手にとっては前方のスペースと来るボールの両方を視野に入れながら、ボールを受けたほうが確実にコントロールしやすくなり、またパスの出し手にとっても受け手が視野の中で横方向に移動している方が強弱の調整がしやすくなるからなのである。加えてストレートなパスとダイアゴナル・ランの組み合わせでは受け手が相手DFとボールの間に体を入れやすいというメリットもある。

一般的に言って、サイドの選手ほどストレート・ランでダイアゴナル・パスを受け、中央の選手ほどダイアゴナル・ランでストレートなパスを受ける、という組み合わせが理にかなっているだろう。

ジュニア年代などではよく、中央の位置でボールに背をむけゴール方向にまっすぐ前に走りながらストレートなパスをDFの間からもらうことを期待している選手を見かけるが、レベルの高いチーム相手ではなかなか成功には至らない。こういったパスはカバーのDFや、GKが比較的簡単にボールをカットしてしまうものである。

 

ブラインドサイド・ラン(図121)

この種類の走りは基本的に相手DFの背後(死角=ブラインドサイド)を抜けるダイアゴナル・ランを意味する。名前の通り、守備の選手はボールを視野に入れ続けるために背後まで目が届かない、図121ではM2がボールウォッチャーとなっている相手DFの背後にブラインドサイド・ランで侵入している。

 

 

フラット・ラン(図122・123)

よくFWの選手がオフサイドにかからないようにタイミングを計るために行われる方法。フラット・ランで横に移動し、パスが出た直後に方向を変えてスペースに入りボールを受ける。(図122・123)

ローテイティング・ラン(図124・125)

複数の選手がポジションチェンジを行い、相手守備陣をかく乱することを狙う。図124ではFWとMFがポジションチェンジを行い、FWが作ったスペースへMFが走り込んでいる。図125ではサイドのMFが中へ入りセンターのMFがサイドのスペースを使えるようにしている。

パスの出し手は相手DFの対応次第でつなげる相手を変えることができる。1970年代に世界を驚かせたオランダの「トータルフットボール」では多くの選手のポジションチェンジがその基礎となっていた。そしてそれ以降現代サッカーの一つの特徴として選手達のポジションの入れ替わりが挙げられる。


サードマン・ランニング(3人目の動き 図126)

ある2人の選手間でパスを通し、相手チームの注意をひきつけている間に、3人目の選手が(一般的には後方から)相手DFラインの裏のスペースへ走り込むというもの。もちろん、この種類のフリーランニングではオフサイドにならないよう走り出しのタイミングに注意することが大事になる。

実は多くの場合3人目でもらう選手というのが一連の動きの仕掛け役で、最初にパスを出して前へ走り始め、他の選手同士でさらにパスがつながったあとにスペースでボールを受けようとしている。 図126ではM2がサードマン・ランニングで最終的に相手DFの裏のスペースでボールを受けることに成功している。

ダミー・ラン

よいFWの選手はほとんど足を止めない、そして常に相手の裏をかくような動きを試みているものである。ダミー・ランを仕掛け、自身のマーカーを振り切ってスペースを作る。

ダミー・ランとはまずある方向に動いてそのあと素早く反対側に戻りボールを受ける方法でトップレベルのフォワードにとって非常に基本的なことである。ちなみにある指導者はこれを「最初の動きはDFのために、そして次の動きが自分のために」と表現するものもいる。

ダミー・ランは一歩か二歩ほどのとっても短い距離で行われることも多い。とにかくマーカーを違う方向に動かせられればいいのである。なによりも大事な要素はそのタイミングで、早すぎるとマーカーは方向転換しマークし直す、遅すぎると、パサーが混乱しその場を離れた瞬間にボールが元いた場所に着てしまう。

それでは図127から131でダミー・ランの種類をいくつか紹介しよう。

 

図127:ここではFWの選手が相手の裏に走り出すフリをして相手DFを動かし、すぐに目の前に出てきて足元でボールを受けている。

図128:FWがボールを持っているMFに近づくような動きをしたあと、すぐにサイドの裏のスペースへ動き出している。

図129:FWが外のスペースへ逃げるような動きをしたあと、中央に出来たスペースに再度侵入している。

図130:ダミー・ランではタイミングがとても重要である。この図ではサイドMFがD1がボールを受けている間にダミー・ランで中盤に入ってくる動きをみせ、D1が顔を上げパスを出す準備が出来た瞬間に方向転換し、一気に加速しサイドに大きく開いたスペースでボールをもらおうとしている。

図131:サイドMFがタッチライン際を駆け上がる動きをし、マーカーを引き寄せておいて、D3がパスを出せる準備が出来た瞬間に素早い方向転換から足元でボールをもらおうとしている。

 

(了)

攻撃の原則シリーズ:

はじめに

Support サポート

Depth 深み

Width 

Mobility 機動性=運動量とその質

Creativity and Deception 創造性と意外性

Penetration 侵入・突破

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Tags: 全年齢対象  コーチング用ヒント  
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Posted: 2013年07月26日 19:03

Reference: Attacking Principle: Mobility

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