攻撃の原則 -はじめに-

先日サッカーにおける守備の原則を紹介したが、今回はぜひ攻撃の原則について語りたいと思う。点を取るための効果的な攻撃を行うため、ぜひ以下を参考にしてもらいたい。

 

サッカーというスポーツにおけるプレーの最大の目標とは、もちろん「ゴールを奪うこと」である。端的にいうとボール支配率を高めるためのポゼッションを目標をとすることなどに意味は無く、最終的な勝者とは相手チームより多く得点を挙げたチームなのである。

そしてこの「ゴールを奪う」という目標に達するために多くのチャンスメイクがされないといけない。つまり、サッカーを攻撃の観点から見た場合、それはシュートチャンスを創るための道のりそのものなのである。

ゲーム分析によると、多くのシュートチャンス(つまりゴールを奪う機会)は次のいずれかの状況から生まれている。1)ゴールライン際からのクロスボールが入る。2)相手のセンターバックの前にある「ホール(穴)」と呼ばれる位置で攻撃選手がボールを持っている。

それではなぜこの2つのシチュエーションが多くの得点を創出するかを説明しよう。


ゴールライン際からのクロスボール

図101のようなゴールライン際からのクロスボールは図102の短い矢印で示されたディフェンスライン前方からのクロスボールよりも守備陣にとって危険といわれる。これはゴールライン際からのクロスボールに対応するにはDFはゴールをケアする体の向きでクリアを試みないとならなくなるからである。この状態では、DFはクリアが十分にできなかったり、コーナーキックを与える結果となってしまうことが多くある。またDFがマークしている相手FWのポジションを常に確認しながらボールを視野に入れることが特に難しくなり、結果、FWの選手にとってはクロスの到達するタイミングでバックの前に体を入れて、ヘディングシュートなどを狙うことがしやすくなる。これに比べてディフェンスラインの前からのクロスボールは、相手を見ながらクロスボールに対処することが比較的しやすい。

しかし、ディフェンスライン前方からのクロスが得点機会に結びつかないかというとそういうわけではない。マンチェスターユナイテッド、レアルマドリードなどで活躍し今年引退を表明したデビット・ベッカム選手はクロスボールのスペシャリストといわれているが、彼のその位置からのクロスは相手チームにとって大きな脅威だった。というのもベッカムはカーブをかけた、いわゆる巻くボールを正確に強く蹴るという難しい技術を完璧にマスターしており、正確に相手DFとGKの間のスペース(しかもカーブのためにGKは届かない位置)へクロスを送り込みことができた。ベッカムのクロスのスピードと精度はゴールライン際からのクロスボールと同様の効果をもたらし、相手ディフェンダーは不安定な体勢でのクリアーを余儀なくされた。

それでも一般的には、守備陣はディフェンスラインよりも前からのクロスの方がゴール側へ体を向ける必要がなく対処しやすいものである。

 

 

「ホール」の位置でボールを持つ

図103のように攻撃の選手が「ホール」と呼ばれるエリア(=守備側センターバックとMFの間)でゴールを向きながらボールを持っている状況は守備陣にとってはとっても危険な状況である。このように相手の守備の核に近接した位置からは、ドリブル突破をしかけることもキラーパス(=決定的なラストパス)をディフェンスライン裏に出すことも出来る。守備陣にとってこの位置でドリブルを仕掛けられた場合、シュートコースを消すために確実に誰かが対処しなくてはならず、このためカバーの陣形が崩れてしまう。もちろんそういった即座のプレッシャーが無い場合はすぐにシュートを打つことが出来る。そしてドリブルに対してあわてて対処してしまった場合、現実的には、タイミングのずれたチャージやタックルでファールとなり、決定的な位置からのフリーキックやPKとなってしまうことも多い。

図101、102、103から「ゴール機会を創れるかどうか」はDFラインの裏そして前方にスペースを作り、そのスペースを活用することができるかどうかという攻撃チームの能力が大きく寄与していることがわかる。

この攻撃チームの能力の重要性に関してはどんなコーチも異論を出すことはないであろう。

しかし、その状況へのもっとも効果的なアプローチやプロセスに関してはコーチ一人ひとりの意見が異なるところである。速いダイレクトプレーを好む指導者もいれば、急ぎすぎずボールを支配しながらビルドアップすることに重きを置く指導者もいる。そして現在では、より実践的で柔軟とも言える「両方の方法も考慮したハイブリッドな形」が多く採用されている。現代サッカーの最も成功しているチームにはどの状況でスピードアップしカウンターアタックを仕掛けるか、加えてダイレクトにロングパスを入れていくのか、さらには、スピードを落としてボールを支配するのはどのような状況かということを理解している選手を常に擁している。

しかし、コーチング哲学やプレースタイルに関わらず、チームとして、ディフェンスラインの裏や前方といった重要なエリアにボールを運ぶには選手たちが攻撃の原則に沿ってプレーする必要があることは常に同様である。どんなフォーメーションが採用されても、結局選手のポジショニングや動きを司るのは攻撃の原則なのである。

 

そのため、全てのコーチにとって攻撃の原則を理解すること、そしてそれを選手達にコーチングできるということは絶対に必要な条件なのである。

今回のシリーズでは攻撃の原則の次の要素を順に説明していきたい。

Support サポート

Depth 深み

Width 

Mobility 機動性=運動量とその質

Penetration 侵入・突破

Creativity and Deception 創造性と意外性

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Tags: 全年齢対象  コーチング用ヒント  全年齢対象  
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Posted: 2013年07月26日 19:01

Reference: Principles of Attack

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