イングランド指導者のジレンマ:選手の身長

参加したサッカーコーチングコース(指導者講習会)では私はいつも多くの素晴らしいプロコーチ達との出会いとそして彼らとの対話を楽しんできた。 そういった機会でよく興味深く話を聞くのが、プロチームが育成年代の選手の将来性や才能を見極めようとする際、どういった事柄を重視しているのかということである。

彼らが見るのは、選手のゲーム理解力なのか、創造性やボール技術なのか、それとも敏捷性といったことなのだろうか・・・。

 

しかしグラスルーツコーチたちの努力とはうらはらに、プロクラブが最も重要視することはその選手の将来の体格なのだという。判断基準の大きな要素はテクニックではなく将来の体つきだとされているのだ。現代サッカーとは「アスリートスポーツ」のはずである、しかしイングランドではまだ「大きくて強い」もの達のスポーツなのが現状で、もちろん育成年代でも最も大きい選手や最も足の速い選手がすぐに注目を受けるという。

 

ところで、ここで以下に1966年からこれまでの歴代イギリス人バロンドール受賞者をリストアップしてみよう。

 

·         1967 年 ジョージ・ベスト – 5ft 7” (訳注:約1m74cm)

·         1977 年 ケビン・キーガン – 5ft 7” (訳注:約1m74cm)

·         1978 年 ケビン・キーガン – 5ft 7” (訳注:約1m74cm)

·         2001 年 マイケル・オーウェン – 5ft 6” (訳注:約1m73cm)

 

そしてFIFAで20世紀最高の選手と投票されペレとマラドーナはというと、それぞれ1m74cm、そして1m65cmである。また現在のバロンドール受賞者といえばリオネル・メッシだが、彼も1m69cmという背の高さだ。ワールドカップとユーロの2冠を達成したスペイン代表の中心メンバーではイニエスタ=1m70cm、シャビ=1m70cm、シルバ1m74cm、ビジャ1m79cmである。

 

ここにあげた以上の全選手は大きくないながらもチームの勝敗を分けるほど重要な選手達である。

 

フィットネスやスタミナ、強靭さにスピードなどは全て優れた選手としての要素ではある。しかしサッカー選手として最も重要な能力は技術力だろう。そしてボールマスタリーこそ最初にあげられるべき要素である。

イングランドの育成年代では、「大きくて強い」そしてスピードのある選手はそれだけで次のステージに到達してしまい、かえってなかなかテクニックの習得に時間をかけない。一方で身体が小さくて技術と創造性で勝負しないといけない選手達は大きな選手達のパワーでその可能性まで押しのけられてしまうことが多い。

現在のFCバルセロナとそのサッカーこそが育成年代でテクニックの習得を怠らなかった選手達が集まった結果としての素晴らしい例であろう。

 

グラスルーツでプレーする少年少女がプロになれる確率など、宝くじに当たるよりも低い。それでも全てのプロ選手が最初にサッカーに出会い、ボールに触れたのはグラスルーツなのである。

イングランドのプロクラブが大きな選手ばかりに注目することで、いったいこれまでにイングランドサッカーからどれほどのオーウェンやキーガン、そしてジョージ・ベスト級の才能が見過ごされてしまったのであろうか。(了)

 

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Tags: ジュニア対象  コーチの心構え  
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Posted: 2013年04月19日 15:03

Reference: Football Coaching – A Tall Story and the English Dilema

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