遺伝子から、選手のパーフォーマンスを予測することができるのか

遺伝子が運動能力に関して何らかの役割を発揮していることには疑いの余地はない。他の選手よりも、確かに「才能」を授かっている運動選手が存在することを否定する人はほとんどいないだろう。

過去10年間にわたり、研究者たちはある遺伝子を特定することで、パワー/スプリント系か持久系かのアスリートとしての傾向がわかるかもしれないと調査した。現代では、いくつかの会社が将来有望なアスリートのために遺伝子検査を提供している。$100-$150で、これらの会社は特定のスポーツで成功するための適切な遺伝子を持っているかを判断する。彼らは、アスリート達が自分はパワー/スプリント遺伝子か持久系遺伝子のどちらを持っているかを、早期に知ることがベストだと主張している。しかしながら、研究者同士でも、特定の遺伝子がパフォーマンスにどの程度影響し、特に複数の能力が必要となるスポーツで果たして影響力があるのか、といった議論が続いている。スペインの研究者たちは、多くのスポーツでは単一の遺伝子とパフォーマンスの関連性を決定することは難しいのではないかと指摘している。とくに水泳やサッカーなどのパワーと持久力をミックスした能力が求められるものでは。

ACTN3遺伝子は、スプリント/パワーと持久系の両方に関連したものである。人間は、3つの遺伝子タイプを持っている。遺伝子型は、遺伝子の機能と構造の違いである。これらの遺伝子型から作られたタンパク質は、骨格筋にどのような影響を与えるかという点で違いが生じてくる。ACTN3遺伝子について、PR遺伝子型はスプリント/パワー系に関連していると考えられ、XX遺伝子型は持久系に関連し、RX遺伝子型は2つのクロスの様なものであると考えられている。このため研究者達は、水泳のパフォーマンスはRX遺伝子に関連付けられると考えた。

この研究では、スペインの研究者たちがACTN3遺伝子のために、707人に遺伝子検査を行った。彼らは、119人のパワー系アスリート(短距離、幅跳び、バレーボールなど)、154人の持久系アスリート(長距離、自転車、ボートなど)、346人の健康的なノンアスリート、また88人のエリートの水泳選手を対象にテストを行った。アスリートは全員、オリンピックなどを含めて様々な国際大会でスペイン代表に選ばれるほどの選手たちを対象にテストをおこなった。

遺伝子解析は、選手達とノンアスリートによる遺伝子タイプにはほとんど違いがないことを示した。例えば、ノンアスリートの31%はパワー/スプリント系のPR遺伝子を持っていた。持久系アスリートの27%、パワー系のアスリートは31%、水泳選手は35%がPR(パワー系)遺伝子を持っていた。一方で、18%のノンアスリートがXX(持久系)遺伝子をもっており、持久系アスリートは28%、パワー系アスリートが13%、水泳選手が17%がXX遺伝子であった。グループに関係なく対象者の約50%は、RX遺伝子を持っていた。ここから考えれれることは、グループや特定のACTN3遺伝子型は、特定の競技で優勢という明確な兆しはあまり見られていない。

この研究の著者らは、水泳のパフォーマンスへの遺伝子の関連に対して2つの重要な点をあげている。彼らは、スポーツの種類とACTN3遺伝子との間に明確な関係を見出すことはできなかった。彼らは、特定のスポーツにより才能を有したアスリートでも、スプリント/パワー系と持久系の間にトレードオフのような妥協点があるのかもしれないと認めた。しかし、彼らは水泳のように、多くのスポーツでは成功のためにパワーと持久系の両方を必要とすることを強調している。例えば、水泳の大会では50m-400mまでの競技があり、トップタイムは30秒-5分まで異なるので、それはパワー系と持久系の両方が必要である。それゆえに、研究者達はスイマー達が他のアスリートやノンアスリート達と区別できないことはそれほど驚きでないと主張している。

サッカーもまた、パワーと持久力の両方が求められる。選手は、スプリント、ジャンプ、ターンなどのハイパワーの運動を求められるし、1試合あたり8-11キロもの運動量も期待される。それに加えて、テクニカルな要求と状況判断など、高いパフォーマンスには多くの複雑な相互作用がある。

サッカー選手が、平均的にはPR遺伝子(パワー遺伝子)をもっている選手が多いことは驚くことではない。しかし、持久系アスリートやノンアスリートと比較しても、その上昇幅はとても小さく、パフォーマンスとの関連性もそれ程大きくない。水泳と同じように、一つの遺伝子型で選手の将来の運命を決定付けることは非常に困難である。

一部の選手が、他の選手よりも遺伝的な才能があることは疑いようがない。しかしながら、それは単一の遺伝子を持った(またはその遺伝子をもったグループ)アスリート達がサッカー選手としてポテンシャルを発揮したというケースはない。パフォーマンスというのは、もっと複雑である。それよりも最も重要なのは、トレーニングや食事に注意を払い、サッカーへの興味や愛情を育んでいくことなのだろう。(了)

 

 

Reference

Ruiz JR, Santiago C, Yvert T, Muniesa C, Diaz-Urena G, Bekendam N, Fiuza-Luces C, Gomez-Gallegro F, Femia P, Lucia A (2013) ACTN3 genotype in Spanish elite swimmers: No “heterozygous advantage”

Other Studies

Massidda M, Corrias L, Ibba G, Scorcu M, Vona G, Calò CM (2012) Genetic markers and explosive leg-muscle strength in elite Italian soccer players, Journal of Sports Medicine and Physical Fitness, 52: 328-334.

Santiago C, González-Freire M, Serratosa L, Morate FJ, Meyer T, Gómez-Gallego F, Lucia A (2008) ACTN3 genotype in professional soccer players, British Journal of Sports Medicine, 42: 71-73.

Williams JH (2008) Genetic testing of young athletes? The Science of Soccer Online, Dec 21, 2008

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Tags: リサーチ  
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Posted: 2013年02月10日 08:47

Reference: Can a Single Gene Predict Performance?

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