NCAA(全米大学体育)のサッカーでみる、プレシーズンの高い怪我のリスク

残念ながら、ケガはサッカーでは日常的によくあることだ。頻発する足首の捻挫~前十字靭帯の断裂まで、サッカー選手は怪我に苦しみ、その影響は個人だけでなくチームにも大きな影響を与える。

大学生レベルでは、身体的、心理的、そしてトレーニング、遠征や学校生活などの感情的部分も含めて、すべてが怪我の上昇率増加に関わってくる。では、最も怪我が発生しやすい状況に一定のパターンのようなものはあるのか?プレシーズンは、選手たちが怪我を起こしやすい時期のようには感じる。しかし、これは本当にあてはまるものなのか?最近、臨床スポーツ医学誌に掲載された研究では、これは確かに当てはまるかもしれないと示している。実験の調査員は、怪我のリスクを低減するために、トレーナーやコーチたちはプレシーズンのこの時期に特に気をつけることを勧めている。

調査員たちは、NCAA(全米大学体育協会)の傷害調査システムを使用して実験を行った。このシステムは、各チームのトレーニングと、怪我の発生数をそれぞれ数週間にわたり記録を集めるものである。この研究では、1989/1990~2003/2004年を調査期間とした。シーズンは、プレシーズン(最初のゲームが始まる前)、インシーズン(レギュラーシーズン中)、ポストシーズン(プレーオフなどの期間の練習もしくは、最後のリーグ戦終了後)の3つに分けられた。研究のために、調査員たちは、Division1,2,3に所属する250もの異なるチーム、15種類のスポーツを実験対象とした。

この研究をすすめる際に、いくつかの定義をおこなった。まず最初に、怪我は「練習中に発生して、少なくとも1試合もしくは1回以上の練習を休んだもの」として定義した。そしてAE(athlete exposure)は、期間に関係なく、怪我した選手に対して行われるトレーニングセッションとして定義された。例えば、25人の選手が週に6回、AEをリハビリとしてすれば、25×6で150AEsとしてカウントする。

分析されたデータは印象的であった。16年以上にわたり、98000人以上の怪我人が2450万AEs程度記録された。

どんなスポーツに関係なく、練習での怪我の発生率が高いのは、プレシーズンの時期であった。また、秋のスポーツ(欧米ではサッカーは秋開幕)は、春や夏のスポーツに比較して発生率が高かった。

個々のスポーツを見ていくと、女子サッカーはプレシーズンの怪我の発生率が最も高く、女子サッカー(9.5)に続くものとしては、男子レスリング(8.3)、男子サッカー(8.0)、女子体操(8.0)がランクインした。肯定的な側面としては、シーズン中では、怪我のリスク男女ともに、プレシーズンの70%程度にまで下降したことだ。

興味深いことに、ポストシーズンの怪我の発生率はシーズン中より低かった。予想としては、レギュラーシーズンと毎週行われた試合の疲労が、選手に蓄積していくことが予測できたことかもしれないが、実際はそうではなかった。

プレーのレベルに関して言えば、Div.1の女子選手は、Div.3の選手よりも低い怪我の発生率であった。男子選手に関しては、3つのカテゴリーとも一貫した数字であった。

では、なぜサッカーが他のスポーツよりもプレシーズンの怪我の発生率が高いのか?残念ながら、このケースに対しての研究調査では、たくさんの難解で迅速な問題であるため、回答を用意することはできていない。しかしながら、いくつかの可能性のある理由はある。1つめは、プレシーズンではどの選手もスターティングイレブンの座とメンタルの強さを示すために必死で競争をする。また、新しいトレーニングメソッドやプレイスタイルが取り入れられる時期でもある。そのため、心理的な負担が怪我のリスクを高めやすい可能性もある。2つめは、プレシーズンのフィジカル的な要求が非常に高く、選手たちが十分に準備できていない場合がある。秋に開幕するスポーツでは、オフシーズンのトレーニングは夏の休暇時期になり、それはしばしば指導不足の時期になりやすい。そのため、フィットネスレベルがコーチの期待に応えられていないこともある。特に1年生など、大学サッカーに馴染みのない選手にとっては、これは大きな問題になる。一方で、秋にオフシーズントレーニングを迎える競技では、専門のトレーナや強度調整を伴いながらトレーニングが行われる。したがって、秋開幕のサッカー選手は、トレーニング初期では決して最高のコンディションではない可能性が高いだろう。3つめは、遠征などを伴いながら毎週の多くの試合が進むにつれて、コーチはトレーニングの負荷や時間を軽減するだろう。多くの時間は、怪我のリスクを頭に入れながら、トレーニングの内容を考えていくことになる。多くのコーチがシーズン終盤になれば行うような、怪我のリスクを考慮したメニューは、選手の100%のフィットネスという観点からは重要なものである。

最後に、プレシーズンは選手が怪我を引き延ばしてしまうリスクのある時期である。権限を与えられているコーチやトレーナーは、怪我のリスクを軽減する方法に細心の注意を払う必要がある。おそらく、メンタル的にも身体的にも強い強度のトレーニングに耐える用意があるのか、トレーニング時間を減らすのか、十分な休息と栄養を摂らせたほうがよいのか、各セッションで強度を制限したほうが良いケースなのか、各選手を見ながら組み合わせていくことが良いのだろう。(了)

 

Reference:

Agel J, Schisel J (2012) Practice injury rates in collegiate sports, Clinical Journal of Sports Medicine, DOI: 10.1097/JSM.0b013e3182717983

 

 

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Tags: 全年齢対象  
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Posted: 2012年12月24日 17:49

Reference: High Pre-Season Injury Rates in NCAA Soccer

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