暑さ、脱水症状とパフォーマンスの関連

季節が徐々に夏に向かっていくにつれ、暑さや脱水症状の問題がでてくる。1年の中でこの時期の練習や試合は、当然高温多湿の条件の中で行われることが多い。

温度の上昇に対応する術として、身体は汗や蒸発を通じて自身のカラダを冷ましている。暑い日に汗の量が増えると身体に溜め込んでいる水分量が早く減ってしまうことになり、結果として脱水症状を引き起こしかねない。これは、パフォーマンスの低下~もっと深刻な医学的な症状にも関わる全ての問題をひき起こすものである。

実験の結果では、脱水によって体重の2%~3%の水分損失が、筋力、スピード、調整力を含んだフィジカルコンディションに影響を与えることがわかった。イギリスとデンマークの研究者は、実際の試合の中で同じようなパフォーマンスの減少が起こるのかどうかを検証を試みていた。これを検証するにあたって、研究者達は暑い環境と寒い環境で行われたチャンピオンズリーグの試合をもとに検証をおこなった。彼らは、脱水症状が疲れのバロメーターとなっていることが検証できた。

この研究では、2つのUEFAチャンピオンズリーグ予備予選(※例年、7月~8月のシーズン前に開催)に出場するスカンジナビア半島のプロチームの選手を対象におこなった。彼らは、3試合をホームで、3試合をアウェーで戦った。1週間ごとに試合を行い、おおよそ同時刻におこなうことで条件面での偏りをなくすこととした。ホームゲームでは、12℃の環境で試合が行われ、アウェーゲームでは30℃の環境でゲームが行われた。

疲れの度合いは試合前と試合後に行う5回の一連の垂直ジャンプの結果によって決定することとして、各プレイヤーは、それぞれ、一連のジャンプを行い→5秒休む運動を繰り返し行った。垂直ジャンプの高さは記録され、5回のジャンプの平均はパフォーマンスのベンチマークとして使われた。ジャンプテストの対象者は、試合に85分以上出場した選手のみを対象としておこない、試合後、5分以内に速やかに行われた。

結果は予想したとおり、暑い環境ではほぼ2倍程、発汗量に違いが出た。結果として。プレイヤーは体重の3%以上の水分を失い、寒い環境では1.7%にとどまった。

平均的なジャンプの高さは、試合前は40.3cmであった。寒いところでの試合のあとは、ジャンプの高さはほとんど変わらず1cm以内の減少にとどまった。しかし、暑いところでは、ジャンプの高さは6%減少して、2.4cmほど低い値を示した。これは、暑い環境下では、選手たちにより強い負荷がかかっていることを示している。

 

 

疲労の度合いというのは、脱水症状と非常に深い関わりがある。最も汗をかき、脱水症状に近いプレーヤーでは、体重の4%~6%もの水分を失い、パフォーマンスレベルでは10%もの低下が見られた。

研究者は、フルマッチの中での暑さや脱水症状は疲れを誘発する原因になりえると結論付けた。適切な水分補給がなされなければ、スプリントダッシュやジャンプ、シュートなどの激しい運動は、特に試合の後半になるにつれて、精度を欠いたり、力を発揮できなくなることがある。逆に言うと、試合中に適切な水分補給を行えば疲れを軽減できるということでもある。

試合中の脱水症状の問題は、試合前の水分補給の習慣によっても影響されるものでもある。いくつかの研究では、ユース年代の選手たちは水分補給が不十分の状態で、試合やトレーニングを開始していることがわかっている。これは、選手たちが脱水症状を自覚しているわけではなく、奨励される水分量よりも少ない状態であるということである。つまり、水分補給が十分されていない状態で運動を始めるので、脱水症状やパフォーマンス低下の可能性は当然高くなる。それゆえに、試合前の水分補給のキーとしては、キックオフまでの時間を考えて、十分な水分補給を前もって行うことである。また試合中でも、インプレー中のちょっとした間やハーフタイム中など可能なときにはこまめに水分補給を行うことである。

5月26日、イングランドディヴィジョン1(3部リーグ相当)のプレイオフがロンドンで行われた。最高気温は26℃。試合は、延長戦の前後半を戦い11人目のペナルティキックで決着がついた。Huddersfield FCがSheffield Unitedを下し、次のシーズンの昇格を決めた。この試合の興味深いこととしては、暑い気候での120分のプレーのあとにお互いの10人のキッカーのうち6人がPKを外したことであった。これは、脱水症状が疲れを誘発して引き起こしたことであるのか?脱水症状が、素晴らしいキックをミスキックにしてしまうのか。これらを定義づけるのは非常に難しい質問である。しかしながら、ちょっとした正確性やスピードの向上が「昇格」を左右するものになるのならば、水分補給が試合や1年のシーズンの結果を変えてしまうのかもしれない。疲れの少ないプレーヤーは、試合の重要な時間帯により成功しやすいということになるだろう。

覚えておいてほしい重要なこととして脱水症状はパフォーマンスに影響を与える要因であることであり、より大きな問題としては、暑さに関連した病気にもつながるということである。脱水症状は、ちょっとした不快感からより深刻な熱中症まで多くの深刻な合併症につながる。これらの症状は、(今回の研究でも示したとおり)体重の3%の水分損失で症状が現れてくる。そのため、脱水症状の兆候がみられたプレーヤーは、すぐにプレーを止めて、専門の診断をすぐにうけるべきである。

最後に、脱水症状にならないために試合前、試合中に適切な水分補給をおこなってほしい、また試合後も同様である。水分補給が適切に行われている状態は、パフォーマンスを向上させ、健康の問題も避けることができるのだから。(了)

友だち追加

Tags: 全年齢対象  コーチングアドバイス  データ  リサーチ  
By:
Posted: 2016年06月14日 09:01

Reference: Heat, Dehydration and Performance

トップページに戻る